「登山の法律学」とリーダーの責任



しばらく前に買って積読状態になっていた、「登山の法律学」を読んだ。登山を趣味とする弁護士の方が、登山中の事故が元になった裁判の判例などを元に、様々なケースを例に挙げて、法律的解釈を説明した本。なんでもっと早く読んでおかなかったのか後悔する内容。社会人登山サークルの一員(ひところは山行リーダーとしてもよく登っていた)として、気になったポイントを挙げておく。

ここに書いたのは、あくまでもこの本を読んで自分なりに解釈したものであり、実際の裁判などの際にこうなるということではないので、そのつもりで参考にして欲しい。

リーダー責任が問われるかどうかのポイント
  • 参加者との上下あるいは契約上の主従関係があるかどうか
  • 参加者が自己の判断で行動できるか(例えば完全な初心者や、中学生以下などは自己判断できないと見なされる)
  • 参加者がどのような危険があるかを承知してそれを許容していたかどうか

サークル、山岳会
  • 仲間同士の登山としてみられ、リーダーだからと言って特別重い責任はない
  • ただし、明らかな初心者(自己判断ができない人)の参加を認めた場合、保護者を引き受けたと見なされ責任がある

ガイド登山
  • 有事の際はガイドの責任は何らかの形で必ず認められると思ってよい
  • ただし、ガイドがいても危険を回避できない可能性がある場所(高所や冬山など)では、責任の度合いは低く見られる

山でたまたま出会った人に助けを求められた場合
  • 遭遇した人を助けなかったからと言って責任を問われることはない(道義的な問題とは別)
  • 救助を手伝った結果、自己の過失で人を死なせたら責任がある
  • つまり、通りがかりで救助すべきでない(然るべき人に救助を任せるのがよい)

    これは明記されていないがそういう行動が合理的と感じた


その他の責任
  • 当然予想できる危険を回避しなかったと認められると責任がある

    細すぎるロープで確保した、注意書きに書かれた危険な方法で器具を使った、登山道で「走って」いたらすれ違った人にけがさせた、など

  • 他人に危険を与えないような配慮をする義務は常に存在する

遭難
  • 他人に損害を与えて賠償責任を求められたケースは今のところ稀ではある(が、保険は入っておいた方がいい)

これ以外にも、地図の記載が間違っていた場合の責任や、捜索費用の話、山岳保険、さらには、車に相乗りして登山口へ向かう場合のトラブルなど、様々な話題を取り上げており、登山する人なら必読。

また、山に行く際にリーダーの責任が問われた事例を挙げたものとして、「リーダーは何をしていたか (朝日文庫)」という本もあり、こちらもかなり参考になる内容なのでお勧めしたい。

それにしても、この「登山の法律学」も「リーダーは何をしていたか」も絶版なのは非常に惜しい。登山がブームと言われ、今までよりも人々がずっとカジュアルに山に登るようになったが故に、トラブルも増えているだろう。今こそこういった本が読まれるべきだと思うのだが。

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