九州の山々を巡る(5) 霧島(韓国岳)
4座目は霧島は韓国岳である。朝食付きのホテルなので、ロビーに降りておにぎりやらパンやらをこれでもかというほど食べてから遅めの出発。レンタカーで九州自動車道に入ると、程なく桜島サービスエリアに差し掛かる。付近からは桜島が一望できることからそういう名前のサービスエリアなのだろう。実際、桜島は見えたが、気温が高いためかあまりはっきりとは見えなかった。高速道路を下りてしばらく進むと徐々に山間の道へ入っていき、噴煙を上げる霧島温泉周辺を通りすぎると、えびの高原に着く。到着した時からあたりはどんよりと曇っており、今にも雨が降り出しそうな雰囲気。しかし、車はかなり多く、登山道に入ってからも親子連ればかり。周辺の木の高さが低くなる辺りにさしかかると、予想通り雨が降り出し、あっという間に土砂降りになった。慌ててカッパを着る間にもズボンがびしょ濡れになるほどの大雨で、上からは次々と人が引き返してくる。しかしまあ、ゴールデンウィークだということもあるが皆軽装で、カッパどころか傘も持たずにずぶ濡れになり、飲み物すら持っていない人もかなり多い。昨年、小学生の男の子が韓国岳を登り始めたところで遭難したという事故があったが、手軽に登れる山とは言えあまりにも登山に対する意識が低すぎる。大人が死ぬ分にはいわゆる自己責任で片付けられるが、意識の低い親についていった子供が死ぬようでは、何のための登山か分からない。
すれ違うおじさんに「あんたら登るのかい…」と言われながらも、土砂降りの中を登り続けると、山頂へ着く頃にはほとんど雨はやんだ。しかしあたりは真っ白く霧に覆われて、何も見えない。その上風が強く、場所を選ばないと寒くて立ち止まるのも辛いぐらいだ。手早くポットのお湯でスープを作って昼食を食べ、すぐに下山してしまった。
帰りは途中にある林田温泉という霧島いわさきホテルの温泉に入ったが、内湯も露天風呂もかなりの広さで、一見仙酔峡ロープウェイ山頂駅並みの気味の悪さを感じられる建物の外観からのイメージの悪さを覆してくれた。男風呂は残念ながら周囲を巨大なすりガラスで覆われていて景色はほとんど楽しめなかったが、女風呂からは山並みも見えたそうだ。風呂上りにはソフトクリームを舐めながら、朝とは打って変わって晴れ渡った空の下を、鹿児島市内へ向けて車を走らせた。
韓国岳を慌ただしく下りてきてしまったせいでレンタカーを返すまで時間があったので、桜島がよく見えるところがないかと、フェリーターミナル付近をうろうろしていると、岸壁に向けて行き止まりになっている道を見つけたので、車を停める。目前には、青い空に映える桜島が美しく見えた。この時は噴煙はほとんどあがっていなかった。右側に見えるフェリーターミナルでは、かなりの頻度でフェリーが出入りを繰り返している。もう少し時間があればフェリーで渡ってみたかったところだが、実際に麓に行ってみれば桜島のその姿は見られないわけで、対岸から眺めるだけで終わらせたのは、それはそれでよかったのかもしれない。
夜はこの旅行最大の贅沢、黒豚しゃぶしゃぶを食す。本来東京で黒豚を出していたが、本場鹿児島にも出店したという「いちにいさん」へ。予約をとってゆっくり食べたかったのだが、ゴールデンウィーク中は予約はやっていないので並んでくださいとのこと。混んでるからこそ客は予約したいと思うのでは?と疑問に思うシステムだが、仕方ないので名簿に名前を書くが、15組待ち。とても1時間ではしゃぶしゃぶにありつけないと思って、市電へ乗って鹿児島中央駅のアミュプラザに行く。鹿児島中央駅の駅ビルには、なんと観覧車があるのだ。こんな駅は初めて見た。前夜にバスで通りかかった時に、ぜひ乗ってみたいと思っていたので、3人で1ゴンドラを占有して鹿児島の夜景を楽しむ。お台場などの首都圏の観覧車から見る夜景と比べると、高い建物も少なく街はそれほど大きくないが、鹿児島一の繁華街である天文街の方面はネオンが光って美しい。観覧車でお決まり(?)の、隣のゴンドラのカップルの密着具合もじっくり観察した後、店へ戻る。10組ぐらいは捌けているかなと思いきや、あっという間に飛ばされていた。軽くショックを受けてどうしようか考えたが、やっぱりしゃぶしゃぶ食べるしかないという結論に達し、もう一度名前を書いて、今度こそ店の入口で待つ。結局それから1時間ほど待ってやっとこさ入店。乾杯を済ませていざしゃぶしゃぶを! 薄く切られた豚肉は、だしの中に入れるとすぐにピンク色に変わる。それを、ネギをたっぷり入れためんつゆにつけていただく。う、美味すぎる…。肉はダシにはさっとくぐらせるだけなので、脂が結構残ったままで食べることになるのだが、豚肉だし、ネギを多めに絡ませて食べるので、くどくはない。元々そばにもネギをてんこ盛りにするぐらいネギが大好きなので、なんどもおかわりしてしまった。ちょうど乾杯を済ませ、肉を1枚食べた頃に、N田さん登場。九州出身かつ地元で雑誌編集者をされていたということで、「いちにいさん」のことを始め、色々な情報を教えていただいた。直前まで九州で取材をされていたところ、新幹線で駆けつけてくれた。普段首都圏に住んでいるみんなが、九州で4人揃ってしゃぶしゃぶを食べるなんて、不思議なつながりだとしみじみと思いながら、山の話などに花を咲かせ、店を後にした。
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