九州の山々を巡る(6) 開聞岳
6日目 5/3(月・祝)
最後、5つ目の山は開聞岳。N田さんイチオシで、しかも最後の山ということで気分も盛り上がる。後半は車で運転するのが疲れるかと思ったので、列車で移動する計画。朝、慌ただしくホテルの朝食をかきこんで、市電に乗って鹿児島中央駅へ。始めの3座を思い出させるかのように、空は晴れ渡り、爽やかな朝だ。昨夜一旦別れたN田さんと合流し、4人で指宿枕崎線のディーゼルカーに揺られながら指宿の先、山川駅へ向かう。途中、徐々に線路は海岸線に近づいていき、車窓からは海原が見える。視界が良ければ桜島も眺められるところだが、よく見えなかった。指宿を過ぎると、海岸線から少し高度を上げ、海を見下ろすような位置を列車が走るようになり、程なく山川駅に到着。駅前には日本最南端の有人駅を示す標が立っており、その横に咲く真っ赤な花も南国のイメージを誘う。この日の宿は山川駅前にあるくり屋という旅館なので、荷物をそこに預け、サブザックだけを持ってバスを待つ。バス停は岸壁のそばに立っており、すぐ下には透明度の高い海が見え、魚も泳いでいるようだ。午前中の強い日光が界面にあたってきらきらと光り、久住山で霧氷に覆われた山に登ったのと比べても、ずいぶんと南まで旅してきたものだと思った。
海岸沿いにも関わらず意外とアップダウンのある道を飛ばして走るバスに30分近く乗って、開聞登山口というバス停で降りると、すぐそこにきれいな形をした山が見える。これが開聞岳。我々はその山容を見てすごいすごいと騒ぎながら写真を撮るが、地元の中学生達がそれを物珍しそうに眺めている。彼らにとって開聞岳はあまりにも当たり前すぎる光景で、我々のはしゃぎっぷりが滑稽に見えたことだろう。
バス停からまっすぐに開聞岳方向へ歩いていくと、道端には色とりどりの花が植えられ、目を楽しませてくれる。どれもそれまで見た花よりも鮮やかな色をしているように見えるのは、晴れているからか、それとも南の国だからだろうか。道路沿いの中学校からは、吹奏楽部員が管楽器の練習をしている音が聞こえる。何とものどかな休日の空気が漂っている。登山口の直前には、トカラ列島から連れてきたというトカラヤギがなぜか柵の中に放し飼いにされ、やる気の無さそうな顔を見せていた。
登山口は公園になっており、仮設テントの下で市の職員?の人がバッヂや登頂証明書を売っていた。下りてくる予定の時間までやっているか不安だったので、登る前にバッヂを買ってしまう。
登山口からしばらくの間は、鬱蒼と茂った木々で薄暗い森の中をひたすら歩き続ける。登山客はかなり多いようで、登山道はえぐれ、周囲の地面から相当低い位置に下がっている。開聞岳は、過去には他の登山口もあったようだが、現在は登山口は1つしかなく、そこから円錐形をした山の周囲を渦巻きのように右回りに回りながら登っていく。従って、アップダウンはなく、ひたすら登り続けるだけだ。上の方へ行けば大展望が開けるとわかっているからこそ登れるが、単調な登りは気分的にあまりいいものではない。7合目を過ぎてすぐのあたりで初めて樹木が途切れ、景色が見えるようになる。既に昼に差し掛かっているからか、気温も高く、遠くまで見通せるとは言えないが、山の上から海岸線が続く様子を見るのは初めての経験で、やはり開聞岳は特別な感慨がある。
7合目を過ぎて景色が見え出すと、足元は結構急な岩場になり、逆にゆっくりと景色を楽しみながら歩けるような感じではなくなる。しかも自分たちの前後には家族連れやらカップルやらが列を作っており、渋滞気味。風は時折気持ちよく吹きつけてくるが、太陽の光線は夏を感じさせるほどに強かった。頂上に着いてみれば、そこは登山者というよりは地元の人達かと思わせるような軽装のハイカー達で一杯。思い思いにお弁当を開いたり、ジュースを飲んだりしている。バナナを落とした人がいて、あまーい匂いが漂っていたり、ママが食べてるおにぎりがころりと転がり落ちて、子どもが「ママのおにぎり落ちたよ~。あ、また落ちた」とか言ってたりして、混沌としていた。しかし、素晴らしい快晴に、てっぺんの岩に登ればほぼ360度の大展望を楽しめて、今回の旅の最後を飾る山としては最高のものであった。
帰りはひたすらに登ってきた道を下りるだけである。登山口の仮設テントはまだあって、マンゴー白くまアイスを食べてから、開聞駅へ向かう。指宿枕崎線は、山川駅から枕崎よりは、極端に列車の本数が減るため、なかなか列車に乗るプランは難しいのだが、たまたま下山の時間にあった列車があったのだ。時間になると、ところどころ草生した細い線路の上を、ゴトゴトとディーゼルカーがやってくる。乗り込んだ人は殆どが登山客だが、車内は高校生が多い。列車はこんなに揺れていいのかと思うほど上下左右に揺れ、鹿児島中央から山川駅までの乗り心地とは明らかに違う。それだけ線路の保守もされていないということなのだろう。日本最南端の駅(山川は「有人」最南端)、西大川を通り過ぎ、まもなく宿のある山川駅に到着。
この日の宿、くり屋は「日本一安い温泉旅館」との触れ込みで、実際1人素泊まり2150円というユースホステル並みの価格で泊まることができる。しかも、入湯税100円をプラスするだけで温泉にも入れるし、食堂が併設されているので魚料理なども食べられる。荷物を部屋においてから、温泉を楽しみ、食堂へ。隣の席のおじさんに、やっぱりカツオのたたきが有名だよ、と言われたこともあって、4人でカツオのたたき定食を頼む。ビールを飲みながら、カツオのたたきを食べ、窓の外を見れば暮れゆく海が見える。7日間は長いようでいて、もうこれが最後の夜だと思うと、楽しい旅の色々な思い出が頭に浮かぶ。その後、地元の蔵元が作った芋焼酎に切り替えて飲み始めたところまでは覚えているのだが、その後の記憶は徐々に曖昧に…。ロックでがぶがぶ飲んだのがまずかったか、食堂で他の客はすべて帰り我々グループだけになった後、海のそばで話し込んだことは覚えているが、その後のことは断片的にしか覚えていない。暴言吐いてたらホントすみません…。
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